「最も罪深い新字(笑)」の続きです。
当用漢字表を眺めていると、略字の後に正字を示している例があることに気づきます。例えば、臼部の「旧」の後には括弧書きで「舊」が置いてあります。基本的には、1略字の後には1正字のようですが、1つだけ例外が。
辛部の
「弁」の後には
「辨」「瓣」「辯」の3字が括弧でくくられています。つまり、「弁」という字は、この3字の略字と看做すと指定されているわけです。
言うまでもなく、
「弁」「辨」「瓣」「辯」は(日本語音でも現代中国語音でもほぼ同音ではありますが)すべて別字です。
「弁」はかんむりの一種を表す字であり、
「辨」は「わきまえる」、
「瓣」は「あまねし」「はなびら」、
「辯」は「道理を説きあかす」「いいあらそう」「口だっしゃ」等の義です(参考:角川『新字源』)。
つまり、「弁別」「花弁」「弁護士」の「弁」は、本来、
「辨別」「花瓣」「辯護士」と書き分けられるべきであり、これらに対し「弁」を用いるのは「当て字」であり、「弁」本来の字義とは何の関係もありません。言い換えれば、「弁」はもはや表意文字ではなく表音文字として用いられているわけで、「弁別」「花弁」「弁護士」等は、その字面から意味を判断することは不可能な単語ということになります。
他に
「予」と
「豫」、
「余」と
「餘」、
「台」と
「臺」も本来別字であり、同音であることに拠り、前者が後者の当て字として用いられています。
何故、こんな無茶をやったのか。これはひとえに「書きやすさ」に拠るのでしょう。「漢字を表意文字として劣化させる」代わりに「書きやすさ」を優先しているわけです。
「弁護士」と書くのと、
「辯護士」と書くのとでは結構差があります。
手書きであるならば。 手書きという前提がほとんど崩れている現在において、これらの当て字は「表意文字としての劣化」という弊害のみが残っている現象とも言えます(というわけで、個人的には手書きでない場合は使い分けるように意識しています。それでも間違えるんですが;苦笑)。
もっとも、
当用漢字字体表ではなく、当用漢字表の段階から、この当て字が収録されているということは、かなり昔から用いられている当て字であり、戦後に導入されたものではないわけですが。
さて、単漢字レベルでの代用ということならば、上記の例でほとんどだと思うのですが、単語レベルになると、また山のように「当て字」が出てきます。(以下、次回)
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