南飛烏鵲楼

三国志に特化して再開します(2008.04.09)
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最初に訂正。前項「2.1.0.4 評改の理由」で毛宗崗本の原刻本に金聖嘆の序があり、タイトルが『第一才子書』であるかのように書きましたが、大間違いでした(恥)。

詳しくは下記の上田望氏の論文をご参照ください。要点だけ抜き出せば、原刻本はおそらく『四大奇書第一種』というタイトルで、金聖嘆の序はなかったようです。『第一才子書』というタイトル及び金聖嘆の序が附されるのは、更に時代が下ってからのようです。
参考:上田望「毛綸、毛宗崗批評『四大奇書三国志演義』と清代の出版文化」(『東方学』第101輯、2001年1月)↓(PDFファイル)
http://web.kanazawa-u.ac.jp/~chinese/jiaoshi/shangtian/gongzuo/maoben-dongfangxue.pdf

というわけで、前回の記事は毛宗崗父子に派手な濡れ衣を着せてしまったものです(ちゃんと資料を探す手間を省いてはイケナイ)。近々修正します。ただし、毛宗崗本刊行当時、『三国志演義』の売り上げが落ち込んでいたのではないか、という推測そのものは有効なようです。
2.1.0.5 毛宗崗本刊行以後

というのも、原刻本のタイトルにもやはり「三国志」の文字は含まれていないからです。四大奇書というのは、よく知られているように、明代に刊行された長篇小説『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『金瓶梅』を抜きんでた存在として称するものです。毛宗崗本のタイトルは、その筆頭であることを強調するものであり、やはり「他人の褌で相撲を取る」、具体的には『水滸伝』の人気にあやかろうとしたものだと言えそうです。

ところで、上記の上田論文に毛宗崗本の出版数を示したグラフが載っているのですが、これが興味深い(無論、現存しているものからの総数なので、厳密な出版統計とは言えませんが、大雑把な傾向はつかめると思います)。

このグラフによって、各年代の10年ごと出版点数を出すと以下のようになります。

康煕(61年まで) 総件数 2  10年あたり 0.33件
雍正(13年まで) 総件数 5  10年あたり 3.85件
乾隆(60年まで) 総件数 9  10年あたり 1.50件
嘉慶(25年まで) 総件数 3  10年あたり 1.20件
道光(30年まで) 総件数 6  10年あたり 2.00件
咸豊(11年まで) 総件数 7  10年あたり 6.36件
同治(13年まで) 総件数 7  10年あたり 5.38件
光緒(34年まで) 総件数 14  10年あたり 4.12件
民国期       総件数 1  略


明らかに清代後半に至って出版点数が増えており、最盛期は咸豊~光緒(1851~1908)年間です。無論、時代が近いわけですから清代後半の方が多く残っているという側面もありますが、康煕から道光までの200年弱で25点しか確認されていないのに対し、その後60年弱で28件も確認されているわけですから、清代前半よりも後半に毛宗崗本の出版が盛んだったという結論は動かないでしょう。

ということは、穿ちすぎかも知れませんが、毛宗崗本は出版直後から爆発的に流行したわけではなく、長い潜伏期間(笑)を経て通行本の地位を獲得したとも言えそうです。

それでは、その潜伏期間の間、毛本とは別の『三国志演義』が通行本の地位を占めていたかと言えば、そういうわけではないようです。清代において、毛本以外の『三国志演義』というのはあまり確認されていません。やはり、清代前期は『三国志演義』の出版そのものが低調だったようであり、その人気が没落しかかっていた時期なのでしょう。

この事実を示唆する魯迅の興味深い文章があります。

>明末以降、世間では『三国』『水滸』『西遊』『金瓶梅』を四大奇書とし、
>これをすぐれたものとしていたが、清の乾隆中より、『紅楼夢』が流行し、
>『三国』の地位を奪い、とりわけ文人たちの称賛するところとなった。
>(明季以来、世目『三国』『水滸』『西遊』『金瓶梅』為“四大奇書”、
>居説部上首、比清乾隆中、『紅楼夢』盛行、遂奪『三国』之席、
>而尤見称於文人。)
魯迅『中国小説史略』「第二十七篇 清之侠義小説及公案」


魯迅が何に拠ってこの文章を書いたかは定かではありませんが、何にせよ、毛本が通行本となるまでには相当の紆余曲折があったようであり、そのテキストの優秀性にばかりその原因を求めるのは危険かも知れません。(了)

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