南飛烏鵲楼

三国志に特化して再開します(2008.04.09)
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 あらかじめお断りしておきます。今回は完全に妄想です。

 『演義』は後漢桓帝の崩御で幕を開け、次いで黄巾の乱が勃発。
劉備・関羽・張飛の桃園結義も、この乱を平定するという志を遂げ
るために成されたわけです。
 桃園結義後、義勇軍を結成した劉備らは、([シ豕]郡?)太守劉
焉に投じ、黄巾討伐で功績を上げていきます。この劉備の黄巾討
伐自体、正史でははっきりと確認できない話で、劉焉がタク郡太守
だったりすることも含めて、「虚構である」で終ってしまってもいいわ
けですが、こんな所にも『演義』の独自性というのはあったりします。
 劉備の黄巾討伐自体は、『演義』以前に、『三国志平話』や
「張翼徳大破杏林荘」雑劇がすでに語るところですし、黄巾の
本拠が杏林荘だったり、城外で馬を洗って誘き出すという張飛
の計略に黄巾が嵌ったりと、『平話』と雑劇との共通点が多い
ことから、かなり固定された「型」があったと思われます。
 ところが、『演義』における劉備の黄巾討伐は、『平話』や雑
劇とは相当異なります。
 『演義』が『平話』や雑劇と一致しないのはよくあることなんで
すが、その場合、多くは「史実化」されます。諸葛亮の描き方な
んかが典型で、『平話』では完全に「神仙」である諸葛亮が、『演
義』では正史の記述なども大量に採り入れられた結果、かなり
史実に近い、言葉を換えれば、人間らしくなります(それでも神
仙的な傾向は色濃く残っていますが)。
 しかし、劉備の黄巾討伐の場合は、趣が異なり、『平話』・雑
劇より『演義』の方が荒唐無稽だとさえ言えます。
 その傾向が最も顕著なのは、董卓の許を辞した劉関張が朱
儁に投じ、張宝と対決する部分です(『演義』毛宗崗本第2回)。
ここで張宝は妖術を使い、劉備軍は一旦退却します。
 敗走した劉備に対し、朱儁は「ブタ・羊・イヌの血や汚物を注げ
ば、術は破れる」という助言をし、これに従った劉備は張宝を破り、
陣に籠もった張宝はやがて部下に殺害され官軍の勝利となります。
 言うまでもなく荒唐無稽な挿話ですが、ここでポイントになるのは
朱儁です。『平話』や雑劇では黄巾討伐の元帥は皇甫嵩(皇甫松)
であり、朱儁は登場しません。
 ただし、朱儁の登場そのものを『演義』の創作というのは当たらな
いでしょう。『後漢書』霊帝紀に、中平元年(184)3月、北中郎将盧
植を張角討伐に、左中郎将皇甫嵩と右中郎将朱儁を潁川黄巾討伐
に向かわせたという記述があります。
 『演義』は劉備の師でもある盧植も、黄巾討伐に際して登場させて
おり、『平話』や雑劇よりも「史実化」しているわけです。
 しかし、ここで朱儁の果たしている役割がプロップ的に言えば「贈
与者」であることは注意すべきでしょう。ここでの朱儁は、民話にしば
しば登場する「長老」「よい魔法使い」に相当し、主人公(ここでは劉
備)をよい結果に導く役割を担っているわけです(もっとも解りやすい
例は、シンデレラに登場する魔法使いでしょうか)。
 つまり、張宝の妖術を破る一段に限れば、『演義』の構成は多分に
民話的(換言すれば『平話』的)なのであり、それが荒唐無稽と感じ
られる一因となっているのでしょう。
 問題は「何故、この役割が朱儁に割り振られているか」にあります。
先述したように、このような構成そのものは『平話』的と言っていいか
と思いますが、当の『平話』には朱儁は登場しません。
 しかし、皇甫嵩は登場するわけです。で、あれば、この役割は皇甫
嵩でも好さそうなものです。わざわざ、朱儁を引っ張り出す理由が今
ひとつ判然としません。
 史実を見る限り、朱儁と劉備との縁が深いというわけでもなさそうです。

 で、ここからは妄想です。何故、朱儁なのか。それは、その「姓」ゆえ
では無いかと思うのです。『演義』での朱儁の役割は、かなり「美味しい」
ものです。そして、「朱」というのは、『演義』の成立した明朝の皇帝の「姓」
なわけです(明の太祖は朱元璋)。つまり、朱儁を登場させることに拠り、
明朝への尊崇をそこはかとなく表したのではなかろうか、と。
(08.10.06 初稿)

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